レコードをジャケットから取り出し、ホコリをクリーナーで拭き取る。
レコード盤に針を落とす瞬間は、たぶん無意識に息を止めていたか。
針が飛ばないように、そーっと歩いたりとか。
手間のかかる儀式を経ることによって、期待がより高まってくる。
買ったばかりのレコードはいつもヘッドホンで聞いていた。
「プチッ、プチッ」というノイズのあと、待ちに待った音楽が。
なぜか水平器なんかも置いていた。そこまでこだわるコトもないのに。
合理的に目的的になればなるほど、儀式は時代と共に薄れ行く運命
なのか。卒業式に参加しないと卒業できない訳でもなく、結婚式を
挙げないと結婚できない訳でもない。
いろんなコトをショートカットできる。
クリーナーでホコリを取ったり、静電気防止スプレーをかけたり、
針先を掃除したりすることで、モノを大切にするとか、手間をかけるとか、
お行儀を覚えるとかいうことが、いま思えばあったような気がした。
でも、いつでもどこでもケータイで音楽が聞ける。
利便性や快適性を追求し続けるのと同時にやっておかないと
いけないコトがたくさんあるみたい。